シンクロ機構

それぞれが上下に自在に昇降できる二つの並列車輪A・Bを、チェーン等を利用して連結し、一方の車輪が上昇すると、他方の車輪がそれに比例して強制下降させられる機構のことである。斜面を横走りする場合や、車輪の一方を障害物に乗り上げた場合でも、車体をほぼ垂直に保ちながら走行できる。

例えば車輪Aが押し上げられた場合は、車輪Bが同等の長さ(力)分、下げられる。また、車輪Bが押し上げられた場合は、車輪Aが同等の長さ(力)分、下げられる。この機構の効果で、車輪A・Bの接地圧が常に均等になり、凹凸路面や傾斜面の走行時でも、横滑りの危険性を減少できる。さらにコーナリング時には、キャンバースラストが高まって、従来2輪車以上の旋回性能や操縦安定性を発揮する。すなわち多輪車両としての低速安定性を維持しながら、あたかも車輪A・Bの中間に仮想の車輪があるかのような(従来の2輪車と同等の)操舵性、走行感が得られる。
実走行時のシンクロ機構の作動状態: ○車輪Aが段差や障害物に乗り上がった場合: ○斜面の横走り走行の場合(車輪Aが高い方): 車輪Aが押し上げられ、シンクロ機構の効果で車輪Bが下げられる。 (押し上げられた同等の長さ分、下げられる) ○車輪Aが溝等に落ちた場合: 相対的に車輪Bが押し上げられることになり、シンクロ機構の効果で車輪Aが下げられる。 (押し上げられた同等の長さ分、下げられる)
○コーナリング(車輪Aが内側)の場合: シンクロ機構装備の車両は、車体を自在に傾斜させることができるので、コーナリングは従来の2輪車と同等のリーン(傾斜)走行が可能である。そのうえ、回転半径内側の車輪Aが押し上げられ、車輪Bは同等の力で下げられるので、車輪ABの接地圧が均等になり、遠心力によるスリップの危険性が少なくなる。
シンクロ機構に装備されているクッションバネの効果: シンクロ機構には、衝撃の少ない快適な走行をもたらすためにクッションバネが備わっている。 ○両車輪が衝撃的に障害物に乗り上がった場合: 瞬間的には慣性で車体はその高さを維持しているので、両車輪のみが障害物の高さ分押し上げられる。そして両側のチェーンは、その高さに比例した長さ分、下方に引っ張られる。この結果、中央のスプロケットも同じ長さ分強制的に押し下げられ、その下部に装備されているクッションバネが縮められて、衝撃を吸収する。仮に、この場合のチェーンを引っ張る力を各々Fとすると、クッションバネを縮める力は、F+F=2Fとなる。すなわちクッションバネは、2Fの反力でバランスするところまで縮められることとなる。 ○一方の車輪のみが衝撃的に障害物に乗り上がった場合: 上記と同様に乗り上がった車輪のみが押し上げられるため、そちら側のチェーンが下方に急速に引っ張られる。他方の車輪はその高さを維持しているので、中央のスプロケットのみが強制的に押し下げられるが、その長さは「動滑車の原理」で、上記の半分になる。すなわちクッションバネは、1Fの反力でバランスするところまでしか縮められない。 ※上記のごとく、シンクロ機構に装備されたクッションバネは1つでありながら、各々の車輪に独立した2つのクッションバネを装備するのと同じ効果を得られる。
シンクロ機構3輪車と他社のスイングフレーム3輪車との安定性比較 機構比較 シンクロ機構3輪車 それぞれが自在に上下に昇降できる二つの並列車輪をチェーンやワイヤー等を利用して連結し、一方の車輪が上昇すると、他方の車輪がそれに 比例(シンクロ)して強制下降させられる機構。 スイングフレーム3輪車 本体フレームと後2輪フレームの接合部が左右に揺動する機構。接合部に、フレームを垂直に保持するためのバネ等が装備されている。(一般3輪自転車/ピザ配達用3輪バイク等) 走行状態比較